3月から4月、年度替わりの保育園は大変化の時。卒園児や退園児を『いってらっしゃい』と送り出し、新しい園児とご家族を迎える時期。
同時にこの時期は、一緒に働いてきた仲間の新しい旅立ちも見送った。
世界を巡り、保育士の目で「世界の子育て」を視察した後、参画してくれたスタッフ。園長を長年勤め、もう一度現場で学ぶために参画してくれたスタッフ。一度離れた保育士という仕事、復職の一歩として参画してくれたスタッフ。
長く働く場であって欲しいと制度や環境を整える一方で、外の世界でやりたいことが訪れ、自分自身で決めたことは、みんなで喜んで送り出したい。
記者会見と題した送別会は、それぞれが今感じていることを聞いたり、話をしたり、とても良い時間だったように思う。送別の時だが、笑いが絶えない、そんな時間だった。



「近い将来は海外で保育士として働くために求職活動もしている。もしかしたら半年で辞めるかもしれない」
採用時にそう伝えてくれた誠実な人柄や、やりたいことを実現しようとする大人の姿が子どもにも良い影響があるのではと考え、仲間になってもらったスタッフ。
2025年5月、夢であった海外の園へ勤務が決まった。新しい仲間の歓迎会も兼ねて、これまた記者会見が開かれた。
「夢があれば教えてください」
退職するスタッフからみんなへの質問に、ひとり一人がバナナをマイク替わりにして、応えていく。
夢の大小は関係なく、新しいスタッフを含め、自分を表現し、その人の魅力が周囲に伝わり、何とも素敵な時間が流れた。
******************
人と人の集まりである組織というものは「森」のような生態系であり生命体だと感じる。
園の慣習や形骸化したルールを極力なくし、働く中で、ああしてみよう!こうしてみよう!と試行錯誤を続けてきた。悩んだり、葛藤したり。振り返ると、そこにいた人の存在や、面倒なことだと思いながらも続けてみたことが、土壌の栄養分となり、発酵する基盤となり、柔らかな土壌が出来あがっていた。
そうしていくうちに起こった変化は、スタッフひとり一人の本来の個性やユニークさが湧き上がってきた。森に存在する多種多様な樹木、生物のようだと思った。
保育や対話の中で、自分や他者を知ることや価値観の違いを尊重することはどういうことなのか。学び続けていくと、土壌を張り巡らす根っこが絡み合うように、森を支える上で一番大切な豊かで強固な土壌が醸成された。これが風土というものなのか。
旅立つ仲間の思いは引き継がれ、栄養素が土壌に残る。そこに新しい仲間が加わる。豊かな土壌の上にまたユニークで新たな生命が芽吹きだしている。多種多様な生物が生きる森は変化に強いそうだ。
子どもの育ちも面白いが、大人も面白い!
2025年6月
代表・柴山和代
