森と自然の保育園SORAでは、地域の身近な自然の中で、子どもたちが自分で心動かされるものに夢中になり、遊びこむ時間を大切にしています。そして、子どものそばにいる大人が、自然の中で心を解放し、心を動かす体験は、子どもを理解する上でも、子どもにとって魅力的な存在であるためにも、大きな意味があると考えています。

今回のスタッフ研修では、大人自身が心を動かす時間をスタッフみんなで共有することができました。

子どもたちが、おむすびを持って探索に出かけることのあるいたち川。ご家族同士の交流の機会でもあるファミリーデイでも、親子で川遊びを一緒に楽しみましたが、この地域にある最も身近な自然あふれる場所です。

研修の講師として、現在小学生対象の日帰り自然体験プログラム『森と自然のこどもリトリート』でメインスタッフを担当しているプレイリーダーの藤間啓吾さん(ニックネーム:おけまる)と一緒に出かけてきました。

まずは、おけまるのバックグラウンドを知る時間。これまでの経験や、生き方、どんな時にどんなことを考え、どんな選択をしてきたか、じっくりと話をしてくれました。

大学時代、自分のこれからの生き方を初めて真剣に考えた時に、一度しかない自分の人生、自分が好きなことをして心を動かして生きていこうと、今の生き方を選択したこと。自分が何かに夢中になった場面を思い返した時に浮かんできたのは、自分が子どもの頃に友達や従兄弟と過ごした時間。その時のことは、今でも心が熱くなる思い出として自分の中に残っていると気づいた時に、子どもたちがそんな時間を過ごせる環境を作っていきたいと思ったそう。

覚悟を決めて大学を飛び出し、様々な団体に関わりながら子どもの遊び場に実際自分の身を置いて経験を積み、日々ふりかえりを繰り返しながら自分の力を試し、新しいことにチャレンジしてきたこと。プレイパークや学童保育、保育園などでプレイリーダーとして勤務した後、自分で団体を立ち上げ、移動式の駄菓子屋を中心とした地域にある遊び場が豊かになるような取り組みにも、試行錯誤してチャレンジしたこと。

自分がどう生きるか、自分自身に真摯に向き合い、なりたい自分の姿に一歩ずつ近づこうとしているその姿勢に、私たちも話を聞きながら心が揺さぶられる時間でした。

研修当日はハロウィンの日。ハロウィンにちなんだワンポイントやオレンジ色のものを身に着けること、仮装もOKというミッションの中で、光り輝いていたのは――。自作した自動販売機の衣装を着用したおけまると、調理師はまちゃんの仮装。

その後、電車で移動し、本郷台の駅からいたち川に沿って、目的地の稲荷森の水辺広場まで約2キロを歩きました。

川沿いに入るなり、いろいろと気になって足が止まります。いつも目にしている道端の草花も、「ネズミモチの実でコーヒーが作れるんだよ」「ハルジオンはお浸しにすると美味しいんだよね」というおけまるの言葉に刺激を受け、「これは何の花だろう?」「これは食べれるかな?」と興味津々でスタッフ同士で相談し、持っていった図鑑などを使い調べはじめます。

道中で見つけたザクロや柿の実を取ろうと必死に手を伸ばし、勢いをつけてジャンプしたり。バナナの木を見つけ、咲いている花や葉に触れて感動したり。カラムシという葉を使って紐を作り、縄文時代にはこれで洋服などを作っていたことを知ったり。

道草ばかりでなかなか目的地に到着できず、お腹がすいておむすびをかじりながら歩く姿も。

広場では昼食を取りながらワイワイおしゃべりを楽しむ人もいれば、一人の時間をじっくり過ごし自然の音に耳を傾けたり、数珠玉集めに夢中になる人、見つけたツルでかごを編む人、何人か集まるとドロケイや缶蹴りが始まり夢中で声をあげ走り回る姿もあり、それぞれに自分が心地よいと感じる時間を過ごしました。

園に戻ってからは、この1日を自分がどんなふうに過ごしたか、どんな気づきがあったか、どんなことを感じたか、思い返して振り返りシェアする時間を持ちました。

そこでは、自然の面白さや不思議さなど、より自然への興味が深まった様子や、一緒に過ごした仲間への理解や安心感、そして自分自身の興味惹かれるものや心地よさを知る機会となったことが伝わってきて、この研修の意義が十分にあったことを感じることができました。

子どもたちのそばにいる私たちが、自分の興味関心や心地よさに正直でいることは、一緒にいる子どもたちに「私もそう在りたい」「私もそう在っていいんだ」と思わせる力があります。

子どもたちに願う姿、それをまずは大人が体現できるよう、大人自身が自分に目を向けることが大切だと感じた時間となりました。

今回このスタッフ研修を実施するにあたり、ご協力いただきました保護者のみなさま、講師の藤間さん、藤間さん勤務先のみなさまに感謝を申し上げます。引き続き、SORAがより良い保育の場となっていくよう皆さまと一緒に探求していきたいと思います。

スタッフ一人ひとりが感じたこと、振り返りを一部ですがご紹介します。

◎印象に残っていること

  • おけまるの半生(自分に正直に全力で生きて、1つ1つ選択している)
  • 柿やザクロを皆で本気で取ろうと見上げているとき、通行人の方たちのまなざしが優しかった。温かい人ばかり。子どもたちもこんな環境でのびのび遊べるんだと思った
  • 普段なにげない草も、おけまるの説明でいろんな特徴があるという発見
  • 柿やザクロなど、皆が結構本気で取りにいっている姿が印象的

◎興味深かったこと

  • 見つけた植物などを通して、自分の幼少期の思い出や、過去の経験がよみがえった
  • 植物の底力
  • バナナの花の固さと葉っぱの手触りの良さ
  • 夢中になって遊んでいると、小さい事は気にならなくなる自分に驚いた
  • スタッフひとり一人の興味・関心がバラバラで面白い!
  • スタッフみんながそれぞれに色々な楽しみ方をしていたのが興味深かった
  • 人それぞれの楽しみ方があって、童心がいつもより見られて面白かった!

◎たのしかったこと

  • 心を許しあえる仲間との自然の中での活動全体を楽しめた
  • からむしの皮でひもを編んだこと
  • ザクロを久々に味わったこと
  • みんなが楽しそうに遊んでいて、こっちも楽しかった
  • 屋外で絵を描いたこと。時間を気にせず、じっくり描いたのは小学生以来
  • 缶けりなどをしているみんなをみていて、幸せな気持ちになった

◎心地よかった時間

  • 大人だけで全力で遊べたこと(ドロケイ、缶けり、かごめかごめ、だるまさんがころんだ)
  • みんながドロケイなどを楽しんでいる姿や声を聴いているとき
  • 自分で集めた自然物で制作することが好きだと再確認
  • 鳥の声、みんなの声を聴きながら、のんびり川を眺めている時間
  • 普段子どもの見守りで気を張っているが、心からリラックスして楽しめた
  • 大人同士で何して遊ぶ?とワクワクしながら考えて、思い切り遊んだこと
  • 一人で川を感じているとき。これ何だろう?と好奇心がわいているとき

Text :  施設長・藤本尚子