「なぜ、保育園を立ち上げたのか」
「保育を通して、何がしたかったのか」
開園から4年が経とうとしている。このタイミングで立ち返る年にしたいと思い、開園までのことを振り返りながら、不定期に綴っていきたいと思う。

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「周りに迷惑をかけない」という道徳観は、子育てにおいて様々な場面で自分が苦しむことになりました。その経験を経て「迷惑をかけ合える関係性をどれだけ作っていけるかが、生きやすさにつながる」と、考え方が180度変化しました。

コロナ初期の2020年4月。開園2年目。

まだコロナ感染症についてのエビデンスが少ない状況。行政の判断がなかなか共有されず。そんな中でSORAとして判断の最優先事項は、子どもとスタッフの“人命”。休園を決めました。

「職場に迷惑がかかるから」

休園に承諾しかねるご家族の気持ちは痛いほど理解できました。
その中で自分の経験をお伝えできたこと。
SORAとして大切にしたい軸が明確になったこと。
コロナ禍でご家族との関係性が深まったこと。

“きっとSORAファミリーは理解してくれるはず”と力強いメッセージをくださったご家族の力も大きかった。
ピンチはチャンスとはまさにこのことだと痛感した出来事でした。

保護者に送付したメールを記録として残しておきたいと思います。

 

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SORAご家族のみなさまへ

この度、SORAの子ども全員が、集団で過ごす園よりも感染リスクを軽減できる居場所の確認ができましたので、4月13日(月)から休園いたします。お仕事の調整や交渉でのご尽力に感謝いたします。また、内閣府および横浜市への臨時休園届の提出が完了したこともあわせてご報告させていただきます。

子どもが感染してしまった後の世界を想像しました。親は濃厚接触者として自宅待機。子どもは隔離措置を受け病院へ。ひっ迫した医療機関で看護師はひとりで何人もの看護と養護をする状況。行動が制限された柵の高いベッドの中で24時間を過ごす子ども。子どもとは面会できず、どんな状態かもわからない。重症化したら会えずに亡くなってしまう現実もある。

娘が1歳半の時、腎臓病ネフローゼ症候群を発症し緊急入院しました。1ヶ月の入院はまだ1歳半の子どもには過酷なものでした。命に関わる病気ではないし、面会もできました。それでも後悔や自責の念、あの時の判断、働くことの意味を考え続けました。

お子さんをただ預かることだけが保育園の役割ではないと考えています。みなさんに発信し、お話をする中で、ご家族の心境が変化していくのを感じました。企業のあり方、社会のあり方、ご家族のあり方、SORAとして一番大切にすべきことは何か。その意味を問い、SORAとしての軸がひとつ定まった大切な機会となりました。

最後に。
今回、みなさまにご協力を得ることができたのは、どのような状況になろうとも、普段と変わりなく子どもと日常を過ごしたスタッフとご家族の信頼関係があったからこそだと思います。ご家族、スタッフそして今も最前線で働く方々に心から敬意と感謝を申し上げます。

森のようちえんで再会しましょう。

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密集・密室ではない森のようちえん活動からスタート

休園となり、ご家族の先が見えない不安感を払拭するため、休園後の構想もお伝えし、2週間の休園後には森のようちえん活動をはじめました。

【森のようちえん】
1ヶ月もの間、乳幼児がいる中で長い時間在宅となる不安などもあるかと思います。感染拡大状況にもよりますが、4月下旬から「密集」「密室」ではない自然豊かな港南台の公園を活用し、森のようちえん(園舎を使用せず自然の中での活動)をはじめられたと思います。

【園のテラスをオフィスに】
子どもがいない休園の時に限りSORAテラスを開放いたします。自宅では仕事がはかどらない時間もあるかと思いますので、保護者のみ利用可能でパパ・ママ交代でご利用ください。コーヒー、wifi、ミシン等あります。

スケジュール
2020年4月13日~ 臨時休園
2020年4月27日  森のようちえん開始
2020年5月7日8日 公園にて午前保育(天気次第)
2020年5月11日~ 通常保育再開

 

 


 

 


投稿者  柴山 和代

ITメディアやメーカー等で、WEBの企画立案、コンテンツ制作、UIデザインなどに従事したのち、2019年4月森と自然の保育園SORA開園。異業種から保育業界へ新たなキャリアにチャレンジ。
子育て当事者の視点、保育園に通った保護者の視点、保育園経営者の視点。俯瞰的な視点を大切にしながら情報発信をしていきます。
2016年保育士資格取得。